2020年04月01日

《黄帝内経》の脈診 第52回

9.《玉機真蔵論第十九》その4


【原文】G
黄帝曰:五臓相通、移皆有次。五臓有病、則各伝其所勝。不治、法三月若六月、若三日若六日、伝五臓而当死。(是順伝所勝之次。)故曰:“別于陽者知病从来、別于陰者知死生之期。”言知至其所困而死。



【要約】五臓病の伝変原則を述べている。ここでは紹介していないが【原文】Fにその伝変が詳述されている。



【訳】
黄帝曰く:五臓は相互に通じて、遷移するにも順番がある。五臓に病があれば、各々それが勝つところへ伝わる。治らなければ、長くて三月あるいは六月、早くて三日あるいは六日して、五臓相伝すれば死ぬ。故に曰く:“陽(胃気脈)を弁別すれば病のこれまでが分かり(胃気の盛衰で病の進行状況が分かるということ)、陰(真臓脈)を弁別すれば死生の時期が分かる。”これは自分が勝てないところに至ると死ぬことを言うのである。




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丘の上にあるカテドラル。ポルトは至るところに歴史建造物があります。





【解説】
1)(是順伝所勝之次。)について
これを除いた理由は、
《新校正》云:上文“是順伝所勝之次”の七文字は注の前に留まるべきが、誤って経文の下に来てしまった。これはただ意味がないだけでなく、全元起本《素問》および《甲乙経》でもこの七文字はない。この七文字を除き、未だ理解できない人が疑いを引き起こすことを考慮して、いまは注に置き換える。

 丹波元簡:《新校正》を根拠に、この七文字は王冰《注》が誤って経文に出たものだから、除くのがよい。



2)どんな脈診法?
本文の“別于陽者知病从来、別于陰者知死生之期。”は、《陰陽別論・第七》:“所謂陰者、真臓也、見則為敗、敗必死也。所謂陽者、胃脘之陽也。別于陽者、知病処也。別于陰者、知死生之期。”と同じ内容です。
その脈診法は四時脈診法と五臓脈診法を組み合わせたものです。

では病所を知るとは、具体的にどうするのか?
春季を例にすると、
肝脈(足五里穴あるいは太衝穴)は弦で胃気のある脈;
心脈(神門穴)にも微弦で胃気のある脈;
脾脈(箕門穴)にも微弦で胃気のある脈;
肺脈(経渠穴)にも微弦で胃気のある脈;
腎脈(太谿穴)にも微弦で胃気のある脈を触れる。
これが正常な人の春季に触れる脈象です。

お詫びと訂正です;《陰陽別論第七》その1の内容に間違いがありました。上文のように訂正しました。)

この時、心脈(神門穴)だけに鈎脈が現れたならば病所は心にあります。さらに胃気のある脈の有無により死期を推測する。また時間の経過とともに肺脈(経渠穴)に毛脈が現れれば、病が伝変したことを知ります。最後に心に克つ腎脈である石脈が現れると死亡すると考えるのが、五臓病の伝変原則です。



次回は《玉機真蔵論第十九》その5を紹介します。
掲載予定は4月15日です。





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2020年03月17日

第1回 温病学輪読会

第1回の輪読会はゼミ形式で行われました。

第1章 温病学の簡史
ここでは、
《傷寒論》の成立から温病学が成立するまで約1600年が経過したことを、
各時代の見解を通観しました。



第2章 温病の概念
温病を学ぶための用語を確認しました。



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サンベント駅からカテドラルを望む。空の青さが素晴らしい。




次回はS先生が担当します。
人に発表することで理解が深まると考える先生です。
とても積極的で第3章・第4章担当となりました。
私達もどのようなゼミになるか楽しみにしています。




温病を学びたい方、どうぞご参加ください。
始まったばかりなので、未だ間に合いますよ。



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2020年03月15日

《黄帝内経》の脈診 第51回

9.《玉機真蔵論第十九》その3


【原文】C
帝曰:善。冬脈如営、何如而営?
岐伯曰:冬脈者、腎也、北方水也、万物之所以合藏也、故其気来沈以濡、故曰営。
帝曰:何如而反?
岐伯曰:其気来如弾石者、此謂太過、病在外。其去如数者、此謂不及、病在中。
帝曰:冬脈太過与不及、其病皆何如?
岐伯曰:太過則令人解亦(人偏+亦)、脊脈痛而少気、不欲言。其不及則令人心懸如病飢、少(月+少)中清、脊中痛、少腹満、小便変。
帝曰:善。



【要約】寸口脈診・四時脈診;四時の正常脈と大過・不及の病証を述べている。


【訳】
帝曰:よろしい。冬の脈は営の如し、どうして営となるのか?
岐伯曰:冬脈は、腎であり、北方の水であり、万物は合藏することから、その脈気の現れ方は沈んで軟らかい。故にこれを営と謂う。
帝曰:どのようなものが反なのか?
岐伯曰:その脈気の現れ方は沈んで石を弾いているような脈で、これを太過と謂い、病は外にある。その脈気の現れ方は沈んで速い脈、これを不及と謂い、病は中にある。
帝曰:冬脈の太過と不及では、その病はどのようなものか?
岐伯曰:太過の病は、倦怠して背中が痛み呼吸が弱く、話したがらない。不及の病は、心中不安で飢餓を病んでいるようで、腎が冷え、脊中が痛み、少腹が脹満し、小便の色が変化する。



【解説】
1)濡について
原文では“故其気来沈以搏”となっていますが、
《新校正》云:《甲乙経》では、“搏”の文字を“濡”としており、《甲乙経》に従い“濡”の文字にする。何を以て言うのか?脈沈で濡、“濡”は古では軟の文字を使用しており、つまり冬脈の平脈である。沈で手に強く拍動を感じる脈は、冬脈の太過の脈である。このことから《甲乙経》に従って“濡”の文字とする。



2)冬脈の大過・不及の病理は?
冬脈大過は、沈んで石を弾いているような脈だから、腎陽不足に寒邪が更に侵襲したことを意味している。
冬脈不及は、真陰虧損による虚熱があるから数脈が現れる。
ただし、各症状が現れる理由はよくわからない。






【原文】D
帝曰:四時之序、逆从之変異也。然脾脈独何主?
岐伯曰:脾脈者土也、孤藏以灌四傍者也。
帝曰:然則脾善悪可得見之乎?
岐伯曰:善者不可得見、悪者可見。
帝曰:悪者何如可見?
岐伯曰:其来如水之流者、此謂太過、病在外。如鳥之啄者、此謂不及、病在中。
帝曰:夫子言脾為孤藏・中央土以灌四傍、其太過与不及、其病皆何如?
岐伯曰:太過則令人四支不挙。其不及則令人九竅不通、名曰重強。



【要約】寸口脈診・四時脈診;四時に属さない脾脈の大過・不及の病証を述べている。


【訳】
帝曰:四時には順序があり、逆順の変異がある。然るに脾の脈は四時の何を主るのか?
岐伯曰:脾の脈は土であり、(中央に在って)独り四臓を灌漑している。
帝曰:ならば(四時によらず)脾の正常と病的状態は見ることができるのか?
岐伯曰:正常状態は見ることはできず、病的状態は見ることができる。
帝曰:病的状態としてどのようなものが見られるのか?
岐伯曰:脈の現れ方が水の流れのようなもの(滑動)を太過と謂い、病は外にある。拍動が鳥の喙のように尖って短いものを不及と謂い、病は内にある。
帝曰:先生は、脾は孤藏で中央の土であり四方を灌漑すると言う。脾の太過と不及での病にはどのようなものがあるのか?
岐伯曰:太過すれば四肢を挙げられない。不及すれば九竅は不通となり、それを重強という。




【解説】
1)脾脈の正常脈
《平人気象論第十八》では長夏を四時に加え、正常な脾脈を“長夏胃微耎弱曰平”と紹介している、この篇では脾は四時に属さず脾脈の正常状態は診られないとしている。
正常な脾脈を次のように考えてみよう。
まずは、原文“善者不可得見、悪者可見(正常状態は見ることはできず、病的状態は見ることができる)”から、正常な脾脈は四臓に含まれていてその姿が分からない。

そして“其来如水之流者、此謂太過、病在外。如鳥之喙者、此謂不及、病在中(脈の現れ方が水の流れのようなもの(滑動)を太過と謂い、病は外にある。拍動が鳥の喙のように尖って短いものを不及と謂い、病は内にある)”からは、脾脈については脈拍リズムの大過不及について述べており、脾脈の正常と異常は脈拍リズムの変調を基準としていることが分かる。
このことから正常な脾脈とは、一つは四臓に組み込まれている脈象であること;二つ目は正常な脈拍リズムを具えていることである。この二つを具えている脈象は、穏やかでゆったりとした拍動の脈、つまり胃気の脈と言える。



2)其来如水之流者について
《平人気象論第十八》:“如水之流曰脾死。”は、(拍動のリズムが)行ったきりの流れのような脈、これは脾の死脈である。
本篇の“如水之流”は、脈の流れが滔滔として盛んな脈、つまり滑脈を表現している。


同じ表現ですが、意味するところは異なります。


3)如鳥之啄者について
原文は“喙”であるが“啄”にしている。
その理由は、

《平人気象論第十八》:“鋭堅如鳥之喙”では脾の死脈を表現している。
本篇は死脈の表現ではなく脾気不及の表現だから、
“啄”として鳥が啄ばむように気まぐれに拍動することを表現している。


参考に《難経・十五難》を参照して下さい。


4)脾脈の大過・不及の病理は?
脾脈大過の病理は、痰湿旺盛で脾が主る四肢に流れ四肢が挙げられなくなる。
脾脈普及の病理は、脾気虚衰により四臓へ灌漑できなくなり九竅が栄養されず不通となる。





次回は《玉機真蔵論》その4を紹介します。

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