2018年10月15日

《黄帝内経》の脈診 第16回


6.《玉版論要篇第十五》その2


【原文】B−2
行《奇恒》之法、以太陰始。
行所不勝曰逆、逆則死。行所勝曰从、从則活。八風・四時之勝、終而復始。逆行一過、不復可数。論要華矣。



【訳】
奇恒の法を行うには太陰(寸口脈)から始める。
相克関係の我が克される脈が現れたら逆といい、逆ならば死亡する。相克関係の我が克する脈が現れたら順といい、順ならば活きる。脈象は四時の気候に従っており、五行相生関係の順序に排列し循環している。正常循環が一旦狂えば(疾病が生じれば)、病態は千変万化して数え切れない。以上がこの篇の論旨である。




【解説】

1)奇恒の法とは?
《素問・疏五過論第七十七》:“善為脈者、必以比類奇恒、從容知之。為工而不知道、此診之不足貴。此治之三過也。”
【訳】上手に脈診するものは、必ず奇恒(正常脈象と病的脈象)を比類(比較・類別)して、從容(落ち着いた気持ちで)として診断する。技術が巧みでもその道理を知らなければ、その診察には貴さが不足している。これが治療における第三の過失である。

つまり奇恒の法とは、病的脈象()と正常脈象()を比較して診断する方法を指します。
その脈診部位は寸口部です。




2)行所不勝曰逆、逆則死について
馬蒔(明代の医家)《黄帝内経素問注証発微》の注釈から紹介します。
馬蒔説:五行の我を克するものは所不勝である。行所不勝これを逆となし、逆すれば死す。例えば、木部に金脈が見られ、金部に火脈が見られ、火部に水脈が見られ、水部に土脈が見られ、土部に木脈が見られることである。

しかし、五行の部はどこか分らず具体的な脈診法が見えない。
そこで次のように考える。

後半の“八風・四時之勝、終而復始”からすれば、四時の脈との相生相克関係を言っているのではないか。例えば、春季に秋脈(毛脈)、長夏に春脈(弦脈)、夏季に冬脈(石脈)、秋季に夏脈(鈎脈)、冬季に長夏脈(緩脈)が見られることを指す。ここでは《奇恒》の法を述べている段落だから、寸口脈で判断していることは間違いない。次の行所勝曰从、从則活についても、同様に考えればよい。

このように、
寸口脈の脈象四時の変化相応しているか否かにより、順逆を診断しています。つまり《奇恒》の法そのものです。




次回は《脉要精微論第十七》その1
掲載は11月1日の予定です。



posted by k.yamada at 07:09| 脈診 舌脈セミナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月01日

《黄帝内経》の脈診 第15回


6.《玉版論要篇第十五》その1


【原文】B−1
搏脈、痹躄、寒熱之交。
脈孤、為消気。虚、泄、為奪血。孤為逆、虚為从。




【訳】
脈が強く拍動する場合、例えば痺れて歩行困難、寒熱交錯などを病むものがある。
脈孤(孤とは弦・鈎・毛・石脈で胃気が少ない脈をいう)は気が消耗している。脈が虚弱で泄瀉するものは、血は奪われている。孤とは、偏絶(極めて偏っている)の謂いだから回復し難いので逆、脈虚弱は陰血損傷で次第に回復するから従(順)である。




【解説】

1)脈診部位は?

 次の【原文】B−2から分かるように、
脈診部位は寸口部です。




2)搏脈について

 ここの搏は指に強く拍動する脈を指し、記載されている症状から胃気のない脈を含んでいるのかは不明。そこで、以下の原文で弧脈という表現で真臓脈を持ち出しているから、この搏は単に強く拍動する脈と考える。




3)搏脈、痺躄、寒熱之交について

 先ずは張介賓の注釈から紹介します。
張介賓説: 搏脈とは手に強く拍動することで、これは邪盛正衰陰陽乖乱による脈であるから、痹となり、躄となり、寒或いは熱が交錯する。

 多くの解説本でも邪盛正衰陰陽乖乱を根拠にしているので、実際にどのような状況なのかよく分かりません。
問題なのは正気衰弱としている点にあります。正気衰弱していれば指に強く拍動する脈は現れません。
だから、邪盛正衰ではなく邪正がともに盛んで邪正相争しているので搏脈となります。


 痺躄、寒熱之交については、痺躄は風寒湿邪による痺証;寒熱之交は風寒・風熱邪による悪寒発熱症状と考える。
 このように解釈すると、次に続く脈弧と(脈)虚の関連性が良く分かります。
つまり、搏脈は邪正相争の脈;脈弧は胃気の少ない脈;脈虚は陰血不足の脈となります。
そうすると、搏脈は邪気がなくなれば次第に治癒し、脈虚は陰血が補われれば治癒するので順逆で言えば順となる。一方、脈弧は胃気が不足しているので回復の見込みはなく逆となる。というのが本文の意味です。




次回は、《玉版論要篇第十五》その2 を紹介します。
掲載予定は10月15日です。




posted by k.yamada at 08:58| 脈診 舌脈セミナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月15日

《黄帝内経》の脈診 第14回

5.《五蔵別論第十一》その2



【原文】C
 凡治病者、必察其上下、適其脈候、観其志意、与其病能。拘于鬼神者、不可与言至治。
悪于針石者、不可与言至巧。病不許治者、病必不治、治之無効矣。


『注』
 原文では“凡治病必察其下適其脈観其志意与其病也”としている。この段落は《黄帝内経太素》巻十四《人迎脈口診篇》に見られ、“凡治病者、必察其上下、適其脈候、観其志意、与其病能”とある。ここでは《太素》に従う。



【訳】
 凡そ病の治療には、必ず上下(人迎と寸口)の脈拍を診察し、その脈が時候に適応しているかを観察し、そして病人の精神状態を観察して病態を判断する。
もし鬼神に固執しているものには、最高の医学理論を授ける意味はなく;針石治療を望まないものには、至高の技術を行うべきではなく;また病人が(医師を信用せず)治療を拒むものは必ず治癒することはなく、強いて治療しても効果は得られない。




【解説】

1)どんな脈診法か?
 人迎寸口脈診法と四時脈診法を組み合わせた脈診法です。

 その内容は《素問・脉要精微論》に短く紹介されています。
その【原文】は、
《素問・脉要精微論》:“推而上之、下而不上、腰足清也。推而下之、上而不下、頭項痛也。”
【訳】(春夏は)人迎脈が盛んなはずが寸口脈盛んであるのは、陽気不足し陰気が下で旺盛なので足腰が冷える。(秋冬は)寸口脈が盛んなはずが人迎脈盛んであるのは、陽気が上で盛んとなるので頭項痛となる。


 以上の訳文は私個人の解釈によるものです。多くの注釈家による解釈を読んでも、どのような脈診法か分からないので自分なりに解釈してみました。


2)観其志意について
 志意については、多くの注釈を読んでも具体的でなく分かりにくいです。
 もっと単純に、【原文】Cの後半部分にある“鬼神に固執しているもの;針石治療を望まないもの;病人が(医師を信用せず)治療を拒むもの”と考えました。

 昔から、このような人達はいたんですね。




次回は《玉版論要篇第十五》その1 を紹介します。
掲載予定は10月1日です。





posted by k.yamada at 08:59| 脈診 舌脈セミナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする