2018年05月15日

《黄帝内経》の脈診 第8回

《黄帝内経》の脈診 第8回


文字が小さく読みにくいことと思います。
しばらくの間、ご容赦下さい。



2.《陰陽別論第七》その5

【原文】P
三陰倶搏、二十日夜半死。二陰倶搏、十三日夕時死。一陰倶搏、十日死。三陽倶搏且鼓、三日死。三陰三陽倶搏、心腹満、発尽、不得隠曲、五日死。二陽倶搏、其病温、死不治、不過十日死。


【訳】
 三陰(手足太陰経)の脈全てに真臓脈が現れたものは、二十日後の夜半に死亡する。二陰(手足少陰経)の脈全てに真臓脈が現れたものは、十三日後の夕刻に死亡する。一陰(手足厥陰経)の脈全てに真臓脈が現れたものは、十日後に死亡する。三陽(手足太陽経)の脈全てに真臓脈が現れ且つ鼓動が甚だしいものは、三日後に死亡する。三陰三陽(手足太陰・手足太陽経)の脈全てに真臓脈が現れ、心腹脹満が極みとなり、大小便不通のものは五日後に死亡する。二陽(手足陽明経)の脈全てに真臓脈が現れ、温熱病を患えば治療しても十日を過ぎれば死亡する。



【解説】
1)三陰三陽の分類
 本文は三陰、二陰、一陰、三陽、二陽の経脈に真臓脈が現れた場合の死期を述べている。ここの三陰三陽の分類は、三陰を手足太陰経;二陰を手足少陰経;一陰を手足厥陰経;三陽を手足太陽経;三陰三陽は手足太陰経と手足太陽経;二陽は手足陽明経の各経脈を指します。



2)脈診部位
 本篇《陰陽別論第七》の脈診部位は、各経脈の拍動部位である。具体的には、手太陰経は経渠穴;足太陰経は箕門穴。手少陰経は神門穴;足少陰経は太谿穴。手厥陰経は曲沢穴;足厥陰経は、男は足五里穴、女は太衝穴。手太陽経は聴宮穴;足太陽経は委中穴。手陽明経は合谷穴;足陽明経は衝陽穴を指します。
 この部位は、《素問・三部九候論》にある王冰注などを根拠に各経脈の拍動部位とする。



3)倶搏について
 搏は真臓脈と注釈されており、胃気のない脈で本臓の陰脈だけの脈としている。
 各五臓の真臓脈は部位も脈象も分かっているけれど、六腑の脈診部位や真臓脈については、どの注釈家も言及していない。三陰三陽脈診法については、その他の篇でも同じく明らかではない。
 では、どのように考えるのか?
 それは、搏を真臓脈と解釈するのではなく、胃気の無い(ゆったりとしていない)脈で強く拍動する脈と考えればよい。そうすれば本臓の陰脈を持ち出さなくても解釈できます。



4)そのほかの三陰三陽の分類
 《素問》の三陰三陽分類は本篇と同じものと違うものがあり、その違いを紹介します。

《陰陽別論第七》:手足三陰三陽経として分類。


《平人気象論第十八》:太陽は穀雨後の六十日間;少陽は冬至後の六十日間;陽明は雨水後の六十日間を指し、時期として分類。


《経脈別論第二十一》:寸口部で触れる脈象を、三陰三陽の代表脈象としている。例えば、太陽の脈象は浮;少陽の脈象は滑で不実;陽明の脈象は大浮;太陰の脈象は沈有力;少陰の脈象は沈で不浮などとして分類。


《病能論第四十六》:岐伯曰:“陽明者常動、巨陽・少陽不動、不動而動大疾、此其候也。”の巨陽(太陽)・少陽は《陰陽別論第七》の分類と同じ。


《大奇論第四十八》:“三陽急為瘕。三陰急為疝。二陰急為癇厥。二陽急為驚。”は《陰陽別論第七》の分類と同じ。


《四時刺逆従論第六十四》:《陰陽別論第七》の分類と同じ。


《陰陽類論第七十九》:《平人気象論第十八》の分類と同じ。




次回は《陰陽別論第七》のまとめを紹介します。
掲載予定は6月1日です。
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2018年05月01日

《黄帝内経》の脈診 第7回

2.《陰陽別論第七》その4


【原文】N
陰搏陽別、謂之有子。

【訳】
 陰脈の拍動がはっきりして陽脈と区別できるもの(脈の去来がはっきりしている脈つまり滑脈)は妊娠脈である。


【解説】
1)陰搏陽別について
 李中梓説:陰搏陽別とは、陰脈の拍動が陽脈とかけ離れているという意味である。陰陽の二字が包括している意味は広い。左右で言うなら、左を陽、右を陰とする。部位で言うなら、寸を陽、尺を陰とする。九候で言うなら、浮を陽、沈を陰とする。必ず様々な陰陽を通して、その後にどの陰陽を示しているかを決めるべきである(《内経知要・脈診篇》)。

 このように陰陽脈をさまざまに解釈するべし、と書かれています。
 ここでは、陰陽脈を脈の去来つまり脈の拡張・収縮とすれば、陰搏陽別とは脈の拡張・収縮がはっきりしている滑脈となります。
 この解釈が一番わかりやすく、臨床運用できるものだと考えます。ゆえに、この陰陽は脈の拡張・収縮として考えます。

2)脈診部位は?
 妊娠脈についての記載は本篇と《素問・平人気象論》にあります。

《素問・平人気象論》【原文】P:“婦人手少陰脈動甚者、妊子也。”
【訳】婦人の手少陰脈の脈動が甚だしいものは、妊娠している。

 この手少陰脈というのは、手少陰心経の神門穴を指します。そして脈動が甚だしいとは、はっきりした脈動とすれば滑脈に相当します。だから《素問・平人気象論》の妊娠脈とは、神門穴に滑脈が現れた脈となります。
 また全元起本では、手少陰ではなく足少陰としているので足少陰腎経の太谿穴である可能性もあります。このように諸説あり簡単に決められないものもあります。
 心は血を主り、腎は生殖を主り、妊娠により生理は止まり、気血は充実するので、どちらにも滑脈は現れることでしょう。
 では本篇《陰陽別論》の脈診部位はどこでしょうか。実際には脈診部位は書かれていません。なんだか頼りない話しですが、正確には分かりません。
 現在は主に寸口脈診を採用しているので、単純に脈診部位は寸口部と思いますが、《素問》ではさまざまな脈診部位で診断しているのです。



【原文】O
陰陽虚、腸澼、死。
陽加于陰、謂之汗。
陰虚陽搏、謂之崩。

【訳】
陰脈(沈脈)陽脈(浮脈)ともに虚(無胃気)で痢疾を患う人は死亡する。
陽脈(浮脈)が陰脈(沈脈)より旺盛なものを、多汗という。
陰脈(沈脈)で虚(細い)そして陽脈(浮脈)が盛んなものを、崩(下血)という。


【解説】
1)陰陽の解釈
 陰陽の解釈は、@陰気・陽気;A寸脈・尺脈;B陰脈・陽脈;C去(収縮)・来(拡張);D沈脈・浮脈;E寸口脈・人迎脈 など色々あります。

 訳出するときは、陰を沈脈;陽を浮脈としました。


2)脈象と病証の病機を考える
@陰陽虚、腸澼、死
 陰脈(沈脈)陽脈(浮脈)ともに虚(無胃気)とは、無力脈に無胃気だから正気不足である。この状態で痢疾が続けば正気はさらに損耗して死亡する。

A陽加于陰、謂之汗
陽脈(浮脈)が陰脈(沈脈)より旺盛なものは、陽気偏盛を表しており、体内の陽気を除くために発汗する。ゆえに多汗という。

B陰虚陽搏、謂之崩
陰脈(沈脈)で虚(細い)そして陽脈(浮脈)が盛んなものとは、陰血が不足して陽気を制約できずに脈が浮いてくる場合である。ゆえに下血により陰血が徐々に不足すると現れる脈。

 私の解釈が正解だとは思いませんが、一番分かりやすく矛盾しないものだと思います。みなさんも色々な陰陽解釈を利用して、原文の脈象と病証の病機を導いてみては如何でしょうか。


3)脈診部位は?
 これは特定できません。どこの脈診部位を意識して書いたのか不明です。
多分、寸口脈診だと思いますが、人迎寸口脈診法として解釈するのも可能かな?ただし、《素問》に書かれた人迎寸口脈診法には、このような病証が書かれていないので寸口脈診でしょう。


次回の掲載は5月15日の予定です。



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2018年04月15日

《黄帝内経》の脈診 第6回

2.《陰陽別論第七》その3



【原文】C
 凡持真(脈之)臓脈者、肝至懸絶・急、十八日死;心至懸絶、九日死;肺至懸絶、十二日死;腎至懸絶、七日死;脾至懸絶、四日死。
 カッコ内は衍文とする。



【訳】
 脈診で真臓脈が得られたものの中で、肝脈(男五里穴・女太衝穴)の拍動が長く途絶え弦があれば十八日後に死亡する;心脈(神門穴)の拍動が長く途絶えていれば九日後に死亡する;肺脈(経渠穴)の拍動が長く途絶えていれば十二日後に死亡する;腎脈(太溪穴)の拍動が長く途絶えていれば七日後に死亡する;脾脈(箕門穴)の拍動が長く途絶えていれば四日後に死亡する。



【解説】

1)懸絶について
 懸絶の注釈を紹介すると、

 楊上善説:脈拍が途絶え久しく来ないことで、故に懸絶という。

 李中梓説:懸絶とは、真臓脈が現れることで、胃気は既になく、落ち着きがなく絶えそうな脈である。(《内経知要・脈診篇》)

 張志聡説:懸絶とは、真臓脈だけが現れ、胃気の陽和が絶えてない脈である。


 懸絶の解釈は三つあり、
 一つは楊上善の“脈拍が途絶える脈”。

 二つ目は李中梓の“胃気がなく絶えそうな脈。”

 三つ目は張志聡の“真臓脈だけの脈。” があります。

 しかし文頭の“凡持真(脈之)臓脈者”から真臓脈があることを前提としているので、楊上善の注釈を採用して訳しました。




2)五臓脈の部位

 第4回の中で述べたように、脈診部位は《素問・三部九候論》の王冰注を根拠にしています。




【原文】J
 鼓一陽曰鈎、鼓一陰曰毛、鼓陽勝急曰弦、鼓陽至而絶曰石、陰陽相過曰溜。


【訳】
 脈の拍動が有力な脈は鈎脈、拍動が無力な脈は毛脈、拍動が有力で緊張している脈は弦脈、拍動はあるが軽く触れても得られない脈は石脈、脈拍の強弱が交互に来るつまり脈の去来が滑らかな脈は溜脈。


【解説】

1)ご注意下さい
 丹波元簡説:“鼓一陽”以下の二十九文字を按ずるに上下の文意が順接しない。これはその他の篇が誤ってここにあるのであろう。

張g説:この文節には誤りがある。

龍伯堅按:いま丹波元簡・張gの説を根拠にして、ここの二十九文字を取り除く。

ここ【原文】はこの篇にはない文としても、
その意味するところは、五脈を表現しています。




2)五脈の表現
 鈎脈・毛脈・弦脈・石脈・溜脈の脈象表現を、陰陽を用いて表現しています。陰は脈の収縮、陽を脈の拡張としています。
 この五脈は《素問・玉機真蔵論》に詳しく書かれているので、この原文自体が分かりにくくても、訳出に間違いはないと思います。




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