2019年01月15日

《黄帝内経》の脈診 第22回

7.《脈要精微論第十七》その6


【原文】I
 是故持脈有道、虚静為保。春日浮、如魚之游在波。夏日在膚、泛泛乎万物有余。秋日下膚、蟄虫将去。冬日在骨、蟄虫周密、君子居室。
 故曰:“知内者按而紀之、知外者終而始之。”此六者、持脈之大法。



【訳】
 脈診を会得するのに最も大切なことは、虚心で気を静めることである。春の脈は浮いており、まるで波間を泳ぐ魚のようである;夏の脈は皮膚にあり、脈が浮き充満している;秋の脈は皮膚の下にあり、それは虫が越冬のために土に入るようである;冬の脈は深く沈み、土中の虫が密集しているようであり、君子が室内にいるようである。
 故に曰く:“内(臓気)を知るには(寸口)脈を按じ(四時の脈と対応させ)、このことを綱紀とする。外(経気)を知るには経脈(に所属する組織器官)を順番に観察する。”以上の六種類の診法が脈診の大法則である。




【解説】

1)春夏秋冬の脈がまた出てきました
本篇の【原文】G“以春応中規、夏応中矩、秋応中衡、冬応中権。”
とほぼ同じ脈象を表現しています。
ここでの表現の要点は、季節の違いによる陽気の昇降を中心に論じています。

春は陽気が上昇する途中だから、
脈は浮いてくるが、
まだはっきりとは触れない。
だから“まるで波間を泳ぐ魚のよう”と表現される。


夏は陽気旺盛となるから、
脈は浮きはっきりと触れる。
だから“脈が浮き充満している”と表現される。


秋は陽気が下降しているから、
脈は触れるけれど沈む傾向にある。
だから“皮膚の下にあり、それは虫が越冬のために土に入るよう”
と表現される。


冬は陽気が完全に沈んでいるから、
脈の位置は深くなる。
だから“土中の虫が密集しているようであり、君子が室内にいるよう”
と表現される。



このように春の脈は上昇傾向にある浮脈であり、
秋の脈は下降傾向にある浮脈ということもできる。
秋脈の表現で《平人気象論第十八》では毛脈;《玉機真蔵論》では浮脈とあり、
文字は異なりますが、下降傾向の浮脈を指しています。




2)六者、持脈之大法と何か

六種類の診法が脈診の大法則とありますが、
具体的には何だろうか?

一つ目;“持脈有道、虚静為保”つまり脈診を会得するのに最も大切なことは、虚心で気を静める。

二つ目〜五つ目;“知内者按而紀之”つまり内の病を知るのは、季節と脈象の相応・不相応による方法。四季と対応しているので4つあります。

六つ目;“知外者終而始之”つまり外の病を知るのは、経脈上を触れて病所を知る方法。


この六種類の診法は注釈家により異なり定説はありません。
私は以上のように考えています。




次回は【原文】11を紹介します。
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2019年01月01日

《黄帝内経》の脈診 第21回

7.《脈要精微論第十七》その5



前回は【原文】Gにある黄帝の五つの質問から、
質問1の回答を紹介しました。



今回は質問2〜質問5についてです。




黄帝の質問2:脈診で病の所在をどのように知るのか?


岐伯の回答2:脈と四時陰陽の変化する時期とが相応しているものは正常とする。もし相応していなければ季節と脈象の変化を根拠にして、病がどの臓にあるか判断でき、その死亡時期を知ることができる。


具体的な診断法は?
本篇の【原文】11〜【原文】14に脈象から病の所在を知る内容が述べられています。
しかし、四時と脈象の変化による診断ではありません。


四時と脈象の変化による五臓の病や死脈については、
《平人気象論第十八》の【原文】E〜Iに述べられています。
岐伯の詳しい答えは一旦おあずけとなります。
なぜ本篇に記載されていないのかな?
《黄帝内経》では具体的な記載がなく、その原理原則だけ述べていることが多いですよね。そして具体的な内容や診断法は別の篇に散見されたりします。こんなところも《黄帝内経》学習の難しいところです。


また脈象と死期については《陰陽別論第七》【原文】Cそして【原文】17にもありますが、
四時と脈象変化による診断法ではありません。






黄帝の質問3:脈診で病の変化をどのように知るのか?


岐伯の回答3:回答はありません。
この回答に関しては《平人気象論第十八》の【原文】E〜Iにあります。




黄帝の質問4:脈診で病が内にあることをどのように知るのか?


岐伯の回答4:回答はありません。





黄帝の質問5:脈診で病が外にあることをどのように知るのか?


岐伯の回答5:回答はありません。

ただし次に紹介する【原文】Iに“知内者按而紀之、知外者終而始之”とあるけれど、
これは原則を述べているだけで、具体的な内容はありません。

具体的には、《玉機真蔵論第十九》【原文】@〜Dにあります。
これも他篇に回答がある例です。本当にややこしいですね〜。




次回は【原文】Iを紹介します。
掲載は1月15日の予定です。





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2018年12月15日

《黄帝内経》の脈診 第20回

6.《脈要精微論第十七》その4


【原文】G
 帝曰:脈其四時動奈何?知病之所在奈何?知病之所変奈何?知病乍在内奈何?知病乍在外奈何?請問此五者可得聞乎?
 岐伯曰:請言其与天運転大也。万物之外、六合之内、天地之変、陰陽之応、彼春之暖為夏之暑、彼秋之忿、為冬之怒、四変之動、脈与之上下。
 以春応中規、夏応中矩、秋応中衡、冬応中権。
 是故冬至四十五日、陽気微上、陰気微下。夏至四十五日、陰気微上、陽気微下。
 陰陽有時、与脈為期。期而相失、知脈所分。分之有期、故知死時。
 微妙在脈、不可不察。察之有紀、从陰陽始。始之有経、从五行生。生之有度、四時為数。循数勿失、与天地如一。得一之情、以知死生。是故声合五音、色合五行、脈合陰陽。





【訳】
 黄帝曰:脈には四時の変動があると言うのは何故か?脈診で病の所在をどのように知るのか?脈診で病の変化をどのように知るのか?脈診で病が内にあることをどのように知るのか?脈診で病が外にあることをどのように知るのか?以上の五つを問いたいが、その理由をお聞かせ頂けますか?
 岐伯曰:脈の変化と天地の運行は相応じており、その道理は広大で微妙なものであると言うことです。天地の間における変化は陰陽に応じており、春季は温暖であり、夏は暑熱となり、秋季は冷涼であり、冬季は厳寒となる。四季の変動により、脈も浮沈する。
春は規に応じ、夏は矩に応じ、秋は衡に応じ、冬は権に応じる。
これは冬至から四十五日(立春)は、陽気は微かに増加し陰気は微かに減少し、夏至から四十五日(立秋)は、陰気は微かに増加し陽気は微かに減少しているからである。

脈と四時陰陽の変化する時期とが相応しているものは正常とする。もし相応していなければ季節と脈象の変化を根拠にして病がどの臓にあるか判断でき、その死亡時期を知ることができる。
脈の現れる微妙な変化は細心の注意をもって察するべきである。これを察するには綱紀がありそれは陰陽から始まっている。その始まりには変わらぬ理があり、それは五行より生じ、その生成には節度があり、これが四時変化の根本となっている。(脈は)四時陰陽の変化に従い、天地と協調して一つになり、天地陰陽の道理を得れば死生を知ることができる。故に(天地陰陽の道理は)声では五音(宮商角微羽)と相応し、色では五行(白青黒赤黄色)と相応し、脈では四時陰陽(規矩衡権)と相応している。



本文では、黄帝の五つの質問に岐伯が回答しています。
それでは、五つの質問の回答を確認していきましょう。




黄帝の質問1:脈には四時の変動があると言うのは何故か?

岐伯の回答1:四時の陰陽盛衰により脈象も同様に変化(上下)する。


【解説】その脈象とは?

“以春応中規、夏応中矩、秋応中衡、冬応中権。”

具体的な脈象を王冰の注釈から紹介すると、
規:春脈軟弱、軽虚而滑、如規之象。
“春脈は、軟弱(緊張感がなく)で、浮いていて滑らかな脈象、それは規のようである。”

矩:夏脈洪大、兼之滑数、如矩之象。
“夏脈は、脈拍の拡張が勢いよく、滑らかで速い脈象を兼ね、それは矩のようである。”

衡:秋脈浮毛、軽渋而散、如秤衡之象。
“秋脈は、浮いた羽毛のようにフワフワして、浮いているが拍動がすぐに消える脈象、それは秤衡のようである。”

権:冬脈如石、兼沈而滑、如秤権之象。“冬脈は、石のような脈で、沈んでいるけれど滑らかに拍動している脈、それは秤権のようである。”



《参考》春脈・夏脈・秋脈・冬脈について

具体的な記述は、以下の三篇にあります。
《素問・脈要精微論第十七》・《素問・平人気象論第十八》・《素問・玉機真蔵論第十九》
例えば“春脈如弦”とありますが、我々がイメージしている弦脈とは少し違います。
詳しい説明は各篇に譲りますが、
客篇を読めば正常な弦脈とは、どうゆうものか分かります。


次回は2番目〜5番目の質問に対する回答を紹介します。



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